サウンドセラピーとは

サウンドセラピーはリスニングセラピーとも言います。

 

音が聞こえる仕組みとして、基本的に空気を伝わって聞こえる「空導」、人間の骨を伝わって聞こえる「骨導」の二つがあります。

 

ここで紹介するのは、ヘッドフォンやスピーカー・スマホを使って一定の音楽・曲・音を聞く療法です。

 

身体がリズムを感じることで「安心」を確認する、胎児の頃にお母さんの拍動が聞こえて安心していた感覚を無意識に受け取ってホッとして落ち着く過程が一番最初に効果を感じるしくみとなります。

 

サウンドセラピー機器としては耳を覆う形のヘッドフォンの他に、

  • 骨導で音楽を聴く枕 ドリームパッド Dreampad
  • 骨導で聴くヘッドセット ILsヘッドフォン・ Soundsory
  • 自分の声を骨導フィードバックで聞くフォブレインForBrain

などがあります。

 

紹介しているサウンドセラピーやツールは、だいたい骨導の前庭系刺激をジャンプ台のように使っています。SSP, Safe and Sound Protocolだけ、骨導が含まれていません。


周波数帯⇄身体・感覚・運動・精神



👂「脳はいかに治癒をもたらすか」ノーマン・ドイジ

2015年

脳の可塑性について、目からウロコばかり。。

 

この本を読んで、とにかくサウンドセラピーをやってみたい、と思いました。

発達障害、聴覚処理の問題、聴覚過敏やADHDに効果的なサウンドセラピーとは

 

今まで全然注目を浴びてこなかった脳の「皮質下」への刺激で、脳が機能的変化や構造的変化を起こすことから、サウンドセラピーは有効であるということが分かってきました。

 

ADHDや行動・衝動性の問題を抱える人は、(思考、運動、バランス維持のタイミングを調整する)小脳の体積が低下していて、それが「待てない」衝動性の問題を抱える子供の「行動のタイミングをうまく計れない」につながります(注:改善すれば、体積も大きくなる)

 

サウンドセラピーは「小脳」とそれに結びついた前庭系に大きな影響を与えるため、

 

          

   報酬を処理する脳領域(何かを達成した時に快感情を生む)

           注意をキープすることに関与する皮質の領域        

 

 

などを活性化して強化します。

 

さらに音楽と運動療法による前庭系の刺激は、注意に関与する神経回路の一部を構成する他の皮質下の領域、大脳基底核への信号の送出を引き起こします。

 

大脳基底核は、目の前の課題と関係ないことをしない、脳を抑制する注意力をキープ(集中力の維持)しますが、ADHDの人は、それが小さいことが分かっています。

 

大脳基底核の活動が低下していると、その人はよく確かめずにものごとに飛びつくようになり、「活動過多」や絶え間なく思考がアイデアが浮かぶ兆候があります。

 


 

サウンドセラピーは直接、脳の前頭葉に届くわけではなく、上の図のような、入力された感覚刺激を処理する皮質下のさまざまな領域に達します。

 

刺激されるのは

 

       大脳基底核

       報酬回路  

       網様体賦活系   

       前庭神経核 

       迷走神経など   

です。   

 

脳の皮質下への働きかけ

サウンドセラピーがなぜ発達や注意に効果をもたらすのか?

 

それは脳の一番上にある薄い層、皮質の下にあるがゆえに「皮質下」と呼ばれる部分に働きかけるからで、皮質下の脳は、その機能を無視されてきた歴史があります。

 

理由は2つ。

     

  • 脳の奥深い位置にあるため、以前の技術ではアクセスできなかった
  • 多くの単純な動物の脳は皮質下の組織しか持たず、これらの動物は、人間には備わる「高度な」思考能力を持たないために、「皮質下の脳は単純である」と考えられていた 

 

 

「私たちは複雑で自動的な動作(歩行のようなきわめて「自然」なものも含む)を二ステップ で習得する。まず、あらゆる細部に注意を払いながら学習する。たとえば、子どものピアノ の練習を想像してみればよい。この意識的な学習の段階は自動的なものではなく、心的努力  の集中を必要とする。それには、 前頭前野(額の背後に存在)と皮質下(脳の奥深く)の 神経回路が関与する。 」

 

 


サウンドセラピーの作用機序(トマティス)


PYCにサウンドセラピーを取り入れるまで

さて、約7年前(2022年現在)、自分がサウンドセラピーの実践者となるためにどのトレーニングを受けるか、自分自身の体験をし、悩みました。

 

「脳はいかに治癒をもたらすか」で紹介されているトマティスから始まった 3大サウンドセラピーです。 

 

 

①アルフレッド・トマティス(フランス)🇫🇷

トマティスリスニングセンター(東京)

 

当時両国にあったトマティスセンターでサウンドセラピーを主人とともに体験しました。森田先生・丸山先生ありがとうございました。

 

アセスメントでは、各周波数の聞き取りの状況、空導・骨導での違い、身体の状況との関連などきちんと検査して説明を受けられます。

 

必要な頻度通ってリスニングするのは難しいのでSolistenという機器レンタルで4か月聴きました。

 

ただ、当時交通事故で九死に一生を得た弟が入院、繰り返し手術を受けていた時期で立ち会いほか全ての手続きや問題処理に追われ、実家父の入院加療も続いていて、仕事もまともに行けなくなっていました。トマティスの指示通りではなく本来の効果を発揮できるような聴き方とはなっていなかった可能性があります。

  

トマティスのツールでPYCでもレンタル、あるいは購入のお手伝いをしているもの(アフィリエイト割引適用)

 

*ForBrain(自分の声が骨導で聞こえる、聴覚と発話・発音のフィードバックループを利用するヘッドセット)

 

*Pronounce(Forbrainの機能を英語、フランス語、スペイン語に特化)

 

*Soundsory(ホームプログラム用・集中力/記憶力の改善・発達障害の聴覚ー感覚刺激による自己調整の効果) 1日30分×40日のプログラム

 

   

②ポール・マドゥール(カナダ)🇨🇦リスニングセンター 

 千葉に認証セラピスト 井上慧子さんがいます。メルマガ購読しています。

 

③ロン・ミンソン(アメリカ)🇺🇸

  iLs 統合リスニングシステム:iLs Focus System というリスニング+感覚統合のプログラム(ホームプログラム、レンタルも可能)とVoice-pro System, Pro System というシステムがあります。 

 

最初に使うのは、iLs Focusシステムというリスニングプログラムで、基本的な聴覚処理・身体・感覚の調整、集中力注意力改善、聴覚処理と読解、パフォーマンスアップ、目標別の構成です。

 

1セッション1時間ですが、セラピーや日常生活の中で15分ずつ、30分ずつなど、聴けるタイミングや時間に合わせて使います。iPodに音楽とアクティビティ動画が入っており、空導骨導を別々にコントロールするアンプが付いています。

 

1)Calming Program 10セッション

2)Sensory & Motor Program 60セッション

3)Concentration & Attention P 40 セッション

4)Reading & Auditory Processing P 40セッション

5)Optimal Performance I 24セッション、II 24セッション

    Sensory&Motor(追加用)10セッション

 

 感覚運動の活動リストと説明、実際の動きの動画がついています。大人用、幼児用それぞれ10種類の動き×10セットついています。この活動リストの内容には、

  • 原始反射の統合
  • Astronaut Training
  • Brain Gym®️
  • エクストラレッスン®️
  • ビジョントレーニング

他多くの要素が含まれています。最近、Balavisx含め、いろいろな感覚運動のプログラムが出てきていますが、どうなんだろう?10年来のアメリカのOT仲間に聞いてみました。iLsの活動リストは以上の5つほかの要素を取り入れた包括的な内容になっているとのことでした。

 

1セッション、1時間のリスニングのうち最初の15分〜にリストの運動を取り入れるのが基本形です。

 

トレーニングを受ける前に、体験のみならず、内容や手法についても出来る限り調べました。

 

それぞれの手法の根本はトマティスなので共通で、例えば「お母さんの声を加工して使うプログラム」も可能、ということが私にとって大事なことでした。

 

当時、カナダへ長くトレーニングへ行ける状況になかったこと、ASDとADHDの併存がかなり多いこと、聴覚刺激だけ、よりも聴覚+身体のアプローチがよりASD・ADHDの治療に効果があると考え、iLs 統合リスニングシステムを選び、トレーニングを受けました。


そして2017年春、SSPを日本で初めて導入した時

「脳はいかに治癒をもたらすか」はポージェス博士の研究、「中耳の筋肉」と表情の関係性も指摘されていることも書いています。 2017年春、紹介されていたSSP, Safe & Sound Protocol を日本で一番最初に使ってみました。

 

「中耳の筋肉」、アブミ骨筋を調節する「顔面神経」は、まぶたを上げ、表情をコントロールする筋肉を調整していて、誰かの話に興味をもつと、その人の音声の周波数に合わせられるよう中耳の筋肉は収縮し、まぶたは開いたまま。つまり表情に出てくるのです。

 

中耳の筋肉を鍛えることで、相手の表情への注目が変わるだけでなくその人自身の表情も違ってくる。

 

それは実際、長年RDIを一緒にやってきた方がSSPを使ってみたとき、起こりました。その方のお父さんが、すごく穏やかでいい表情をしていた、とすぐコメントされました。何かこだわりと違うことがあるとかんしゃくやパニックがあった場面でも、一切そういったことがなくなり、作業所のスタッフもびっくりしていた、とのことです。

 

SSP Gatheringでも確認してきました。SSPの次に使うプログラムはリスニング40セッションが20セッションに短縮できるなど、より少ないセッションで同じかそれ以上の効果を出せることもわかってきています。

 

また、私のセッションでは、使うのがSSPでもiLsでも、感覚運動をしながら相互性のある活動を可能な限り取り入れています。相互調整(ポリヴェーガル理論・RDI共通 Co-regulation) と自己調整がうまく働くチャンスを生かさないなんて、もったいない!という考えです。