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子供が自閉症と言われたらどこへ行く?横浜市2019年版

 自閉症治療の専門家・臨床心理士が、2019年現在の横浜市に関し、自閉症に対し公的サポートを受けるための手続きを注意点を含めて詳しくご説明します。

 

<この記事の目次>

①自治体の支援窓口へ行く

②地域の「療育センター」を使う

③児童発達支援事業所(児発)を利用する

④専門家を上手に使う

はじめに

 

自閉症専門カウンセラー、臨床心理士の菅原です。

 

多くのご両親にとって、お子さんが自閉症だと気づくきっかけは、自治体の乳幼児健診です。

 

現在では「自閉症スペクトラム障害」「自閉スペクトラム症」「広汎性発達障害」と呼ぶ場合が増えており、また知的な遅れがない場合「アスペルガー症候群」という呼び方をする場合もありますが、この記事では便宜上、まとめて「自閉症」と呼ぶことにします。

 

それまではなんとなく「大人しい子だな」とか「一人遊びが好きなんだな」と考えていたのに、検査を受けて「お子さんは自閉症かもしれません」と言われたら、ショックで頭が真っ白になり、何も手につかない状態になってしまうのではないでしょうか。

 

慌ててネットで自閉症について調べても、役所や病院、支援施設など情報源がバラバラですし、そもそも情報が多すぎたり古かったりして、今ピンポイントでお子さんのために役に立つ内容がどれなのか、とても分かりにくいのが現状です。

 

この記事では、そういった焦りや不安を抱えて自閉症について調べていらっしゃるご両親のために、自閉症専門の臨床心理士としての立場から、お子さんが自閉傾向と言われた際に取るべきアクションをわかりやすくご説明します。

 

少し長い内容ですが、これを読むことで、何から優先して手続きすればいいか分からないという不安や焦りが解消できます。

 

なお、当カウンセリングルームがある横浜市を例にとって具体的に説明していきます。

 

この記事を読んで欲しい人 

  • 発達検査でお子さんが自閉傾向と言われ、慌てて調べている
  • お子さんの発達が遅く、病院では様子を見ましょうと言われているが、もしかしたら自閉症では?という疑いと不安を抱えていて、他の窓口で相談したい
  • お子さんの社会性について心配で、今後どうすべきかアドバイスを必要としている

①自治体の支援窓口に行く

自閉症を指摘されるのは3歳健診が多い

 お子さんが一定の年齢になると、お住まいの区から乳幼児健診の案内が送られてきます。

 

04か月、16か月、3歳の都合3回あるのですが、このうち自閉症の可能性を指摘されることの多いのが3歳児健康診査、いわゆる「3歳健診」です。

 

16ヶ月健診の前後は、

 

「ウンウンことばも出てきたし、成長しているな」

 

と思っていたのに、その後

 

「あれ、どうしたのだろう、何か変わった気がする」

 

という気づきがそういえばあったと語るご両親は割とよくいらっしゃいます。

 

そういった貴重な振り返りのチャンスともなるのが3歳健診です。

 

3歳健診では身体測定や歯科健診の他に心理士による簡単な検査があり、年齢に応じた遊びができるかどうかや、適切なコミュニケーションが取れるかどうかを確認しています。

 

この時、お子さんがあまり他人に関心を示さず自分の内面世界に没入している傾向が強いとか、特定の音に過敏な反応をして機嫌が悪くなるといった兆候が見られた場合、自閉傾向ありとして両親に知らされることがあります。

 

今この記事を読んでいる方であれば、ここまでは既に体験済みかもしれません。

 

そのケースなら、健診を受けたあと「療育センター」(自治体によっては「発達支援センター」)の利用を案内される場合が多いです。

 

 

 

 

相談窓口は3ヶ月待ち、早めの行動を

 

区福祉保健センターで案内された療育センターに電話をし、最初の相談である「利用相談」の予約をしようとすると、短くても3ヶ月待ちなど、誰もが驚く回答が予想されます。

 

横浜市だけでなく東京都内もここ数年同じような状況です。

 

役所の窓口は初歩的な相談には乗ってくれるものの、結局は「ご両親が各施設で手続きしてね」というスタンスで、詳しい担当者が親身になって今後のプランを作成してくれるわけではありません。

 

介護でいうケアマネージャーのような、色々なサービスを横断的に熟知した上で、統合プランを一緒に考えてくれる人がいないのです。

 

そのためご両親は、この段階で色々な情報を手当たり次第に調べる必要に迫られ、大量のエネルギーを消耗して心身ともに疲れきってしまいます。

 

これまで縁のなかった自閉症という未知の言葉について必死に勉強し、平日昼にしか開いていない窓口へ電話をかけ、病院を予約しようとしたら1年待ちと言われて愕然とする。役所のサイトを見てもなかなか知りたい情報にたどりつかず、詳細は窓口で聞かないと資料すら手に入らない・・・。

 

現状はこのように、一体的な情報提供の仕組みが十分に整っているとはまるで思えません。

 

そうして疲弊した状態で当ルームにたどり着いてくださったご両親へは、私がケアマネージャーのようなつもりで、お子さんにとってやるべきことや必要な手続き、これからの見通しについて全体像を整理して差し上げています。

 

ここでようやく、得体のしれない不安や焦りが和らぎ、ほっと安心した表情を見せていただくケースがとても多いのです。

 

この記事では、私が実際に「自閉症かも」と指摘を受けたお子さんとご両親に対してアドバイスする内容を書き出していきます。


健診で指摘を受けてから、福祉サービス(療育)利用までの流れ

 

健診で自閉症を指摘されたり、ご両親がお子さんの自閉傾向を疑ったりした場合、一般的には次のような流れで行政サポートの手続きを取ることになります。

① 乳幼児健診などで自閉症の指摘を受ける

 ↓

 利用相談(区福祉保健センターか相談支援事業所)

 ↓

 事業所見学(児童発達支援事業所など)

 ↓

 利用申請書提出(区福祉保健センター)

 ↓

 面接調査(区福祉保健センター)

 ↓

 受給者証の交付

 ↓

 事業所と契約、療育開始 

 

このように面倒な手順になっていますので、ご両親からすると理解するのが大変です。やさしく説明しますので楽な気持ちで読み進めてくださいね。


区福祉保健センターとは?

 

横浜市では各区役所の中に「〇〇区福祉保健センター」という窓口があり、自閉症のお子さんに対する支援もここで手続きすることになります。

 

区福祉保健センターは、福祉事務所と保健事務所の役割が統合された部署です。

 

健診から引き続いて相談に乗ってもらうだけでなく、他の公的サポートを受けるために必要な「受給者証」の発行もここでしてもらうため、何をするにしても困ったら最初に行くべき場所です。

 

また健診で特に指摘を受けたわけではないが発達について心配があるという場合も、ここへ電話をするとよいでしょう。

 

必要に応じて窓口での相談や、各地域のサポート拠点である「地域療育センター」(あるいは「発達支援センター」)への紹介をしてくれます。

 

 

 

区福祉保健センターの役割

  • 保護者がどうしたら良いのか最初の相談に乗ってくれる
  • 公的な療育を利用するために必要な「受給者証」を発行してもらう
  • 各施設への紹介をしてくれる

横浜市の福祉保健センター一覧横浜市公式サイト

 

 


受給者証とは?

 

閉症に関して「相談支援」「療育」(児童発達支援)といった公的なサポートを受ける際には、お子さんがそうしたサポートの対象者ですよという証明が必要です。

 

そのための書類を受給者証(正式には障害児通所受給者証)と言います。

 

これがあればお母さんが窓口で相談したり、お子さんを通わせて療育を受けたりできますし、持っていると対象の福祉サービスにかかる料金の自己負担が1割になりますので、取得することが望ましいです。

 

ただし申請すれば誰でも必ず発行されるわけではなく、あくまでお子さんがどの程度サポートを必要としているか次第です。

 

また、お子さんの状態によっては療育手帳(神奈川園では「愛の手帳」という名称)が発行される場合もありますので、詳しくは区福祉保健センターの窓口で確認してください。

 

 

 

 


そもそも療育とは?

受給者証」は療育等のサービスを受けるために必要な証明書ですが、そもそも「療育」とはなんでしょうか? 病院の「治療」とは違うのでしょうか?

 

療育とは、お子さんの身体・感覚・認知・ことば・社会性の成長の様子に合わせて行う「発達支援」のことです。

 

遊びやコミュニケーションを通してできることを増やしたり、眠っている能力を引き出したりして、お子さんが社会生活を営む上での困難を和らげることが主な目的です。

 

療育では発達検査を元に専門家がお子さんの状態についてきちんと両親に説明し、どんな進め方や内容が合っているかを提案します。最終的にはご両親がその療育が適切かどうか判断し、希望する内容を選んでいきます。

 

病院での「治療」というよりは「個別教室」のようなイメージが近いと思います。

 

療育は、幼稚園や保育園と違って、お子さんの様子を見学できます。

 

どんな成長が起こっているか、どんな支援が合っているのか、どんな成長のペースなのか見えてきます。療育を受けることで、家庭以外での客観的な視点や情報源が得られるのです。

  

そうした視点は、ご両親がどんな方向でお子さんの発達を応援していくのが良いか、その指針を決める上で大きな助けになることでしょう。

 

 

 

 


受給者証の申請方法

 

20194月から、横浜市では受給者証を申請する方法が2明示されています。

 

A. 申請に必要な書類を福祉保健センターあるいは相談支援事業所の相談支援専門員に作ってもらう

B. 申請に必要な書類を自分で作って福祉保健センターへ提出する

 

B の制度は「セルフプラン(横浜市子供サポートプラン)」と呼ばれています。療育やサポートが受けられる事業所や各センターで見学や相談をして、ご両親が自分で書類を作成・申請していいですよ、という方法です。

 

結論を先に言いますと、ABどちらもあまり変わりません

 

「自分で各施設を見学して決めてね」というスタンスはどちらも同じ、書類の中で自分が書く分量が違う程度です。

 

AでもBでも書類の書き方はちゃんと教えてもらえます。またAでは、ある程度までの書類の内容は相談員さんに見てもらいながら書き進められます。

 

ただし注意点として、どこの窓口であっても、相談支援専門員さんは、各施設ごとの療育の内容や評判までを熟知しているわけではなく、「責任を持ってあなたにこの事業所をお勧めします」と案内する立場ではありません。

 

あくまで「私の知っている範囲ではこんな感じらしいです」という限定的な情報提供に留まることが多いです。

 

そのため「どの事業者を選び、どんな内容や頻度で療育を利用したいのかは、ご両親が各施設を見学し、お子さんに体験させた上で決めてきてくださいね」という状況です。

 

介護制度のケアマネさんのように、色々なサービスを横断的に熟知した上で統合プランを一緒に考えてくれる人はいないので、ご両親が自分で調べて見学に行って考えて決めるよりないということなんです。

 

療育を受けるための手続きの中で、この部分がご両親にとって負担になる場合が多く、よくご相談やご質問をいただきます。

 

事業者はサービスの方針も品質も様々ですから、適当に選ぶわけにはいきません。できるかぎり多くの事業所へ見学に足を運び、ご自身の目で確かめることをお勧めします。

 

 

 

 

 

 

 

区の福祉保健センター・相談支援事業所で「利用相談」をする

 

さて、改めまして確認です。

 

「利用相談」とは、福祉制度のサポートを受ける上で、具体的な利用方法や手続きについてアドバイスを受け、申請に必要な書類作成を手伝ってもらうことを指します。

 

この「利用相談」は、お住まいの区の「区福祉保健センター」や「障害児相談支援事業所」で行います。いずれも資格を持った相談支援専門員がいて、提出が必要な「利用計画」の作成をサポートしてくれます。

 

「相談支援事業所」と、実際に療育を提供する「児童発達支援事業所」とは行政サービス上別のものです。

 

ところが、この両者は同じ敷地建物に存在することが結構あるので、またしても初心者には混乱しやすいところでしょう。

 

障害児相談支援事業所リスト横浜市公式サイト/20198月現在)

 

この一覧を見ていただくと分かるとおり、相談支援事業所の数は多いです。今数えたら市内に76か所あり、横浜市が全部で18区ですから1区あたり45か所は存在することになります。

 

 

 

 

 

利用相談の先

営業時間

特徴

区福祉保健センターの

こども家庭福祉課

(西区のみ高齢・障害支援課)

平日

区役所の営業時間

 

*注意:第2第4土曜日、各区役所は開庁していますが、障害児発達支援に関する利用相談は受け付けていません

申請書の提出先なので、手続きがよりシンプル

相談支援事業所

その支援事業所により異なる

・事業主はみな民間委託を受けている

・社会福祉法人、株式会社/有限会社、NPOなど運営はさまざま

・児童発達支援事業所に併設されていることがある

  

区福祉保健センター、つまり区役所は平日の日中しか窓口が開いていないので、土日にしか時間が取れない場合はリストにある他の民間事業所も候補になるでしょう。営業時間は事業所によってまちまちなので、それぞれの事業所の公式サイトなどでご確認ください。

 

 

 

 

問題は、相談支援事業所の数がそれだけ多いのに、予約が取りにくい!ということ。

 

横浜市の公式サイトから引用すると

 

「福祉サービスの利用児童数に対して、障害児相談支援事業所数等が充分ではありません。このため、相談支援専門員による相談支援を利用し たくても、すぐに利用できない場合があります」    障害児通所支援事業ご利用の手引き』より

 

このように明記される程ですから、かなり窓口が混雑しているとお分かりいただけるでしょう。

 

そういうわけで、利用相談を区福祉保健センターで行い、自己作成のセルフプランで受給者証の交付にこぎつけてから、各支援事業所と契約してサービスを受ける、という流れが現実的です。

 

 

 

 

 

 

 

「利用相談」で担当者と話す時の注意点

 

「利用相談」当日は、これまでのお子さんのご様子も含め、まずはご両親が心配していることをしっかり伝えましょう。あらかじめメモを作っていくと伝え忘れがなくて済みます。

 

担当者はそれに応じて適切な公的サービスや、サービスを受けるための流れを説明してくれます。

 

 

 

 

◉窓口へ行く前には

 

実際に療育サービスを受けられる場所は児童発達支援事業所になりますので、どこにあるのかをチェックしておきます。

 

一覧はこちらからご覧になれますが、非常に数が多いです。

 

障害児通所支援事業所一覧<横浜市公式サイト>

このリストは頻繁に更新されています。この記事を書いている最中にも「このサイトは移転しました」の表示が出て、調べ直しました。

 

現時点(20198月現在)でも事業所は増えて続けているようです。

利用相談の際に改めて最新のリストを担当者からもらいましょう。

 

また、実のところそのリストでは足りず、横浜市外の療育を選択し車や電車を使って通所するご両親や、その逆に横浜市外から通うご両親も少なからず存在します。みなさん、インターネットで近隣の事業所をかなり検索した末に見学に至っている、という印象です。

 

空き待ちの事業所が多い、ということは念頭においてください。

 

 

 

 

 

区福祉保健センターへ行く前に準備するものチェックリスト

 

⬜︎母子手帳(お子さんの成長過程、初めて歩いたのはいつ頃?予防接種はどこまで終えている?などの質問に答えるため)

⬜︎お薬手帳(どんな病気でどの病院にかかったか、たどる手がかり)

⬜︎発達検査を含む、小児科など医療機関の受診の記録

⬜︎お子さんが現在保育園・幼稚園に通っている場合、その名称・住所・電話番号等が分かるもの、パンフレットなど

 

 

 

  

◉受給者証の発行には2週間~1か月かかる

 

受給者証の発行には申請書提出から2週間~1ヶ月かかることも覚えておくといいでしょう。事業所とサービス利用開始の時期を決める時に、受給者証発行までの見通しが立っていると楽です。

 

【参考】

障害児通所支援事業ご利用のてびき <横浜市公式サイト>   

 


②地域の「療育センター」を使う

地域の療育センターとは?

区福祉保健センターで健診を受けた際、お子さんの発達に関する悩みを相談すると地域の療育センターを紹介される場合も多いですから、既にこちらを訪問しているご両親もいらっしゃるかもしれません。

 

一方、これから利用したい、というご両親にとっては、3ヶ月待ちがザラという状況なので、すぐに利用開始できないかもしれないことをご理解の上でお読みください。

 

地域療育センターは0歳から就学前までのお子さんの発達支援を一貫して担う施設で、次のような役割があります。

 

 

 

療育センターの役割

  • 発達検査を受けられる
  • 受給者証の申請について相談できる(手続き自体は区役所窓口が原則)
  • 医師をはじめとする専門家がいて、それぞれの面からアドバイスがもらえる
  • 数が少なめだが療育プログラムを実施していて、相談しながら参加できる
  • 継続して療育に関する相談ができる

 

 

地域療育センターは、区福祉保健センター同様、相談しやすい窓口です。

 

基本的に横浜市のどのセンターでもソーシャルワーカーさんが相談の受け付けから連絡・連携を一貫して担当し、公的サービスに関する手続きについてわかりやすく教えてもらえます

 

原則として社会福祉法人が運営する地域療育センターは、長年、市の委託を受けているところが多く、ここ数年の療育に関係する変化や流れを把握しています。

 

公的サポートを受ける手続きの途中で、よく分からなくなった時は、地域療育センターへお電話してみるのもいいと思います。いろいろ親切に教えてもらえます。

 

また、横浜市に限っては就学後、お子さんが小学生の間も継続して相談できる、というのも強みです。活動報告を読むと、小学生のお子さんの利用実績は割合として小さいですが、全ての自治体が提供しているシステムではありません。

 

地域療育センターのリスト<横浜市公式サイト>を再度入れておきますね。

 

 

地域療育センターの療育プログラムは、次に説明する児童発達支援事業所のものと並行して利用可能です。各センターのウェブサイトで療育の内容や設定が紹介されています。

 

ただ、地域療育センターの療育は年度ごとに人数制限があり、年度途中から入りにくい設定です。

 

直接電話して確認しましたが、やはり状況は変わらずでした。(20198月現在)。利用したい場合は保活のように早め早めに動く必要がありそうです。

 

 

 

 


③ 児童発達支援事業所(児発)を利用する

療育が受けられる「児童発達支援事業所」とは?

 

小学校入学前までのお子さんが療育を受けられる施設を「児童発達支援事業所」と言います。

 

長いので、ここから先は「事業所」と省略しますね。私達の業界では「児発(ジハツ)」と呼んでいます。

 

多くの事業所は、テナントビルやマンションの一室を利用した、小さな保育園のようなイメージです。

 

遊具や机が置いてあり、発達の様子やその子の課題に合わせ、スタッフがついて一緒に遊んだり、コミュニケーションの練習をしたりします。

 

事業所ごとに独自の方針や内容で療育を行いますから、見学して確認することが必要です

 

利用料は世帯の収入に応じて決定します。受給者証があれば1割負担で済みます。そして2019101日からは無償化されます。それだけ国が発達支援に積極的に取り組んでいる証拠と言えるでしょう。

 

 障害児通所支援事業所一覧<横浜市公式サイト>

 

 

 

 

「公的療育」と「民間療育」はどう違う?

 

2013年に規制が緩和され、従来の法人(社会福祉法人が多い)に限らず、株式会社・有限会社、NPOでも国の認定を受ければ療育事業が運営できるようになりました。その結果、運営主体は多岐に渡り、爆発的に事業所の数は増えました。

 

その中でも、地域の療育センター(発達支援センター)での療育を「公的療育」、その他の事業所で行われている療育を「民間療育」と呼ぶことがあります。

 

いずれの場合も国が負担して発達支援を行う仕組みですが、何が違うのでしょうか。

 

結論から申し上げると、どれが公的療育でどれが民間療育なのかを神経質に区別する必要はないと思います。

 

 

 

 

一般的に、両者の違いはおもに「専門家がどのような形で療育に関わるか」です。

 

公的療育と民間療育では法律が定める設置基準や人員配置の基準が異なり、通常は公的療育の方が専門家を多く配置しています。

 

公的療育の一つ、地域療育センターでは利用相談後、医師を含め、経験の長い専門家がチームとして色々な角度からお子さんの様子を見て、発達支援をどのように進めるか検討します。

 

最終的にその意見をまとめてご両親に伝え、相談・療育を進めます。この手厚さ・安心感が公的療育の売りと言えるかも知れません。

 

 

 

 

一方、民間療育(児童発達支援事業所)にも、プログラムの作成や実際の指導場面で専門家が関わっています。

 

▶︎大手業者が駅近などで多く展開している事業所は、専門家に委託して研究や実績に基づき効果の高い一連のプログラムを開発しました。

どこの教室でも同じ質の内容・教材を保証して提供、ご両親からのニーズに適切に応えており、人気です。

 

▶︎小規模な事業所でも、研修を受けたスタッフが1対1、あるいは小グループでの指導経験を生かした療育が受けられます。

お子さんの療育についてスタッフに声をかけて相談しやすく、療育場面でお子さんがどのような様子か、細かに観察した上で客観的な意見をもらえるメリットがあります。

 

 

 

 

実際には公的・民間という括りよりも、各事業所ごとの特色の違いの方が大きいように見受けられますので、公的だから安心、民間だから便利、といった先入観で判断せず、実際に足を運んで体験することが大切です。

 

特色の例として、専門家のアドバイスをもらいやすい事業所もあります。

たとえば、ことばの発達や発音の専門家である言語聴覚士が、23ヶ月に1度、お子さんの様子をチェックしてご両親に報告してくれるなどです。見学の際はこうした違いにぜひ注目してください。

 

最近では、発達支援センターや地域療育センターが、提供できる療育を増やすため児童発達支援事業所を併設するところも増えています。

 

現状はもはや公的・民間の両者入り乱れと言ってもいいのではないでしょうか。

 

 

 

 

念の為に確認したところ、横浜市では地域療育センターと児発の療育は併用可能です。

 

東京都のある区では、発達支援センター利用希望者のあまりの多さに対応しきれず、一部の公的療育が民間療育と併用できなくなりました。そうなると、再びご両親がお子さんに必要なサポートを考えて選択することが求められ、難しい判断を迫られます

 

そうした際に少しでも判断材料を提供して、ご両親の力になりたいと私は考えています。

 

 

 


事業所を見学する時のポイント

さて、各事業所や療育施設を見学するときはどんなところに気をつけるといいでしょうか。

 

基本的には保育園・幼稚園を見学する要領ですが、たいてい同時に体験教室を勧められます。療育の一部を体験した上で、お子さんに「ここに来てみたい?」と聞いてみましょう。

 

見学と並行して、スタッフと具体的な通所日程の希望や料金などを話し合います。

 

その際に確認しておくべきスタッフは「児童発達支援管理責任者」、通称「児発管(ジハツカン)」です。

 

児発管は療育プランを決める責任者で、必ず児童施設などでの勤務経験があります。事業所や療育プランについて質問があったら、この人に質問すると話が早いです。

 

療育の利用開始後も、ケアプランの見直しなどで必ず一定の頻度で面談することになる相手ですから、この人の印象や態度を見ておくとよいですね。

 

 

 

 

複数の事業所を見学しよう

いくつも事業所を見学するのは大変ですが、利用計画を作る上で最も大切なところです。複数の業者を比較検討の上、どんなスケジュールや頻度で利用できるかご両親でよく話し合ってください。

 

そして利用したい事業所が決まったら、利用計画書を作成し、区福祉保健センターへ利用申請書と共に提出します。それ以降、面談や受給者証の交付まではベルトコンベアに乗って手順通り、お知らせをもらって進みましょう。

 

交付された受給者証を持って、事業所を訪れると登録は完了! その日から療育を開始できます。

 

 

 

 


④専門家を上手に使う

自閉症ケアに関わる専門家の種類と役割

 

地域療育センターや児童発達支援事業所には、療育の専門家が配置されています。

 

とは言え、児童発達支援事業所には発達支援の専門家が1~2人いればいい方で、しかも常駐しているケースは稀です。

 

自閉症の治療に関しては、色々な角度からの見方、つまり複数の専門家からの意見や判断を聞くことが大切だと私は思います。

 

しかし漫然と療育に通っているだけではなかなか専門家のアドバイスを受ける機会がないかもしれません。

 

地域療育センターでは、たとえば利用相談時、医師の意見がまずもらえます。

 

その後複数の専門家が発達検査などでお子さんに接し、意見を出してもらえます。児童発達支援事業所でも専門家の意見が聞ける場面が時折あります。

 

しかし、定期的・自動的に専門家との面談が設定されることは期待できません。

 

療育が開始して数ヶ月経ち、通所が軌道に乗ったら「どこかで専門の方の意見を聞くことはできますか」と尋ねてみるのがオススメです。

 

「療育の専門家」とはどういった人たちでしょうか。簡単に紹介します。お子さんの様子によって、今はどの専門家と話をするのが適切なのか、参考にしていただけたら嬉しいです。

 

【自閉症ケアに関わる専門家の種類と役割一覧】

医師

栄養面を含め、全体的な発達と今後の見通しなど一度は話したい相手

看護師

医師診察の前に問診でじっくり話を聞いてくれたり, 摂食指導も

心理士

発達検査を担当。社会性や発達の詳細・バランスを説明してもらえる

言語聴覚士(略称ST

発音があいまい、構音チェック、口腔外科受診の判断などの相談可能

作業療法士(OT

感覚過敏、手先の不器用さ、じっと座っていられない時相談

理学療法士(PT

大きな動きがぎこちない、外科手術などの治療歴があれば相談必須

歯科医師

摂食指導、偏食の悩みも有効なアドバイスをもらえる

 

 

横浜市の地域療育センターの特徴として、ソーシャルワーカーさんが窓口となる点が挙げられます

 

相談の受け付け窓口として電話で最初に対応、手続きの仕組み案内、利用相談での話の聞き取りの上で、療育の具体的な流れを説明してもらえます。療育の全体像を把握しており、いろいろな場面で相談に乗ってもらえる心強い専門家の一人と考えられます。

 

 

 

 

 

◉専門家との面談時には

首尾よく面談の予定が取れたらチャンスを逃さず、モヤモヤしていた質問をぶつけましょう。

 

専門家への質問のポイント

ご両親が疑問に思うことや知りたいこと、不安なことは残さずメモに書き出しておき、しっかりと伝えます。その上で、以下のポイントに沿って質問するといいですよ。

  • お子さんの今の状況についての判断
  • 現状から見て次の小さい成長の目安は何か
  • 半年後の目標「こんなことが起こる、できるようになると良い」
  • 家庭で両親ができることや工夫
  • 両親としてはこう考えておくといい、ということ、気持ちの持ち方・考え方
  • 引き続き相談したいときはどうすれば良いか

おわりに

 

こんなに長い記事を最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。

 

よく分からない、初めてのことを調べ、しかも役所に相談をしながら手続きをやり遂げるのは本当にエネルギーが要るものです。

 

自閉症かも?と指摘されてから、受給者証を受け取り、療育開始するまでの道のりは、とても長いものに感じられたかもしれません。

しかし、そこを乗り越えると、暗いトンネルを走り抜けて空が見えた時のように、視野が開けているはずです。

 

子育てはマラソンのようなものです。

本当に大丈夫なんだろうか、と心配のタネは尽きません。

 

けれど、ご両親にうまく伴走する療育事業者や専門家を見つけられると、息切れすることなく、落ち着いてお子さんの成長への応援が続けられると思います。

 

そのために、国の支援やサポートを目一杯活用して進んで欲しい、私はそんな思いでご両親を応援しています。

 

もし他に不安なことや知りたいことがあれば、どうぞ当カウンセリングルームへもお越しください。

 

お子さんの成長を応援しようとして療育をやっていくうちに、このサポートで本当にいいのだろうか、と思うことはよくあるようです。

 

他の専門家の意見がなかなか聞けない、違った療育アプローチを試してみたいなど様々な思いを抱えて、ご両親が相談にいらしています。

 

お子さんの健やかな発達のお手伝いをさせていただきます。

 

 

 

 

 

この記事のまとめ                    

  • 横浜市で自閉症と言われたら、最初に区の福祉保健センターへ行く
  • 地域療育センターや児童発達支援事業所を利用して支援のポイントを明確にしよう
  • 専門家の視点を活用するために、上手な質問をして情報を引き出そう