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自閉症かどうかでなくて...2019年報告

この20年いろいろなお子さんや大人の方の、いわゆる「発達障害」「自閉症」の治療に関わるうちに「こんなによくなる」という経験が積み重なり、一方で世の中の自閉症の診断や見方が大きく変わってきた流れを感じています。

 

この記事では、いわゆる自閉症とはどういうことなのか、ご説明するために3つのポイントに沿いお話しします。

  1. 自閉症自体、近年判断の基準が大きく変わっている
  2. 脳の障害という見方から神経の問題という見方に変わったのは大きな変化
  3. 神経発達の問題をどう良くしていくのがいいのだろう

 

ちょっと古い自閉症の定義

 

この20年間、自閉症、自閉症スペクトラム障害、自閉スペクトラム症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群、高機能自閉症、などいろいろな呼称が飛び交い、その診断基準が変化しました。

 

 

しばらく前までは、判断の基準の例はたとえば、

  • 特定のものへの強いこだわり    
  • 感覚過敏・鈍さ
  • 限局したコミュニケーション

でした。

これは、3つとも何か身体の中でうまくいっていないことがある結果として現れている「症状」のようなものだと仮に考えます。以前はこの症状の起こる原因が「脳の障害」脳のどこかに不全があるから仕方がないのだ、という見方でした。

 

ところが「脳の障害説」はくつがえり、神経発達の問題だという見方に変わります。

 

 

新しい自閉症の定義では

 

明確に変わったのはDSM-Vという国際的な診断基準でした。

 

診断基準の1つ目の視点は

 

「コミュニケーション」

 

2つめが

 

「繰り返す行動」「こだわり」「執着」「感覚について過敏や鈍さ、他の異常」

 

の中から2つ以上当てはまるか、

 

に変わっています。

 

そして「コミュニケーション」がうまく行っていない様子をいくつか例をあげて説明しています。

 

・感情の共有

・非言語コミュニケーション(顔の表情、音調、ジェスチャー...

・相手の視点の想像

・相手への興味...

 

そうです、コミュニケーションの様子が第一の見極めに必要とし、症状の表れ方を2番目に格下げしているのです。

 

コミュニケーションの様子については、自閉症的なコミュニケーションの特徴が以前の診断基準より具体的に書かれているのですが、大事なところなので別のところで詳述します。だからどうしたらいいか、というところは、このウェブサイトの別のページにも記載しています。

 

 

そして、神経発達の問題だ、という定義の転換は

 

神経の発達がうまくいくよう、工夫できるという意味です。

 

 

「脳そのものの不全で治せない」▶︎▶︎▶︎「神経発達の問題」

 

コロッと転換しました。

 

 

 

 

 

脳の神経発達の問題を治していくにはどんな療育をするか

 

脳神経の発達の問題なら、神経のつながりは経験で変えられます。だから良くできる。

 

大きな視点の転換ですよね。RDI, 対人関係発達支援法が20年余りずっと言い続けてきたことが公式に認められたと思います。

ただ、どんな神経発達を目指してどんな療育をするか、が問題です。

 

 

 

巷では、お子さんの表面に現れる行動に注目して「教えてさせる」やり方が結果が見えやすいため、その一辺倒の療育がずっと続いています。

 

結果、どうなるか。

 

教えていないことはできない、自分で気づいて考えて動く、という脳の神経回路の使い方は発達してきません。

 

また、感覚の問題については教えて治すことはできないですよね。

 

感覚過敏・感覚の鈍さ・異常についてできることがない、と今でも日本では考えられており、環境調整するのが基本的な潮流です。

 

けれど例えば、OT, 作業療法の領域で10年以上も前から感覚過敏は治せることがわかっています。少々OTだけでは時間がかかるようですが、アメリカではOTセラピーが保険適用(日本と違って任意加入保険)されます。効果のエビデンス、研究の裏付けが出ているからでしょう。

 

日本の療育ではOTセラピーは効果が見えるまで時間がかかる、頻度が足りない、といった状況です。

 

OT+リスニングのサウンドセラピー, iLs統合システムで「自閉症がみるみる治る」のをアメリカで見た、と語るお母さんもいました。それってどんな変化を指して言っているのだろう、と不思議に思っていました。

 

2016年頃、まだサウンドセラピーを取り入れ始めて日が浅かったのですが、数ヶ月過ぎてわかりました。

 

iLs セラピーをすると、自閉症の症状のうち「こだわり」や「感覚過敏」などが少なくなり、「人と向き合える」ようになるのです。

 

 

SSP, Safe & Sound Protocol, ポリヴェーガル理論のインパクト

 

さらに、Safe & Sound Protocol, SSP を加えサウンドセラピーを連動させると、自閉スペクトラム症の診断を確かに受けていたけれど、一層早い時期に、お子さんによっては数ヶ月のうちに、診断が間違っていたではないかと思うようなケースに多々出会いました。

 

まるで別の人のように

  • 周囲の人の感情や視点に気づく
  • 相手の立場に立って考えることができる
  • 共感し、相手の気持ちを気遣うことができる
  • かんしゃくやパニックが消失し、イライラなどの感情の揺れから立ち直りが早くなる

 

のを目撃しています。例としてSSPを経験したらこんな様子が見えて驚いた、という報告はこちらです。

 

 

 

 

 

聴覚過敏や脳・腸の炎症・免疫の反応を始めとする身体・神経・感覚にかかる負荷・ストレスが高いために、ちょっとしたことでイライラしやすかったりしただけで、自己調整できないわけではなかった...

 

そして、SSPで社会交流システムが動き始めるのなら

 

そのお子さんに人と関わる社会交流システムが

 

「ない」のではなく、そのシステムを動かすような余裕が心と身体になかっただけ

 

ということを、SSPを経験して大きな変化を見せたお子さんたちが教えてくれました。

 

上の4つの力を備えている人を自閉症というでしょうか?

 

定義は何だったのでしょう。最初に戻ってみると、もう当てはまらないことにお気づきいただけると思います。

 

 

 

 

 

ストレスから解放されればコミュニケーションは伸ばせる

 

また、自閉症のコミュニケーションの問題については、身体・感覚・神経にかかる負荷を取り除いてみたら、成長を邪魔するものがなくなり改善していけると思うのです。

 

身体や感覚にかかるストレスが高いせいで自分の調整がうまくいかない様子は、いわゆる自律神経症状と呼ばれ、以下のような現れ方をします。

 

・睡眠の質が悪い

・疲れが取れず、疲れやすい

・不安が強い、安心できるものにこだわる

・イライラしやすい、パニックになる、すぐキレる

・(落ち着かないから落ち着こうとして)手や足がいつも動いたりする

 

最後の一つで水俣病の患者さんの症状を思い出します。神経毒の結果でしたね。

 

 

 

 

そうです。自律神経系を始めとする神経系への負荷が高い時、身体の中で炎症が起こっていたり、免疫が戦っていたりする時こんなことが起こる。

 

今のお子さんの心配な症状は、身体と脳・感覚器官からの「ツライよー」という叫びではないでしょうか。

 

ストレスとなるものを取り除けば

  1. こだわりや下向きから姿勢が変わり、周囲に目を向けられる
  2. 相手の顔や表情を見て、気持ちを知ろうとする
  3. 人と少しずつ気持ちを通わせ始める
  4. 自分が感じることを顔の表情などで表現できる
  5. 同じ気持ちか確かめようとする  

こんな本来のコミュニケーションに必要な発達のプロセスをたどれるのです。

 

そのプロセスでは、

⭐️もともと自然に起こっていたはずの経験の積み重ねが起こっていく

⭐️身体や感覚・神経系が落ち着いて機能していれば記憶もしっかり残る

⭐️本来のそのお子さんらしさが伸びてくる

 

コミュニケーションの基本となる部分は一つずつ積み上げていけばいいのです。そこはご両親がそばで、じっくり見守り一緒に経験することで、神経のつながりができて、成長のサイクルがうまく回り始めます。

 

そのサイクルが見えるなら、周囲は「教えてやらせる」必要はなくて「導いて経験させる」ことができるわけです。どんな成長を目標にしていけばいいのか、ご両親と話し合うことができる。

 

そんな自閉症ではなくなっていくプロセスをこれまでたくさん見てきました。発達検査のような客観的な変化報告も出てきています

 

 

 

 

 

お子さんの神経の状態を整え、身体や感覚・免疫システムなどで安定の妨げとなっているものがないか検討し、取り除いてみませんか。そして、自己調整・社会性発達のスタートラインにお子さんと一緒に立ちましょう。

 

数年前、ある公的療育施設の面接で「うちは(自閉症は)治らない、と親御さんに言って療育をしているけどそれでもうちで働いてもらえる?」と言われました。私は自閉症は治せると考え取り組む、と主張していたため、あえて確認されたのだと思います。こちらの事情が変わりその施設にご縁はありませんでしたが、その質問が印象に強く残りました。

 

残念ながら、世の中まだまだ、自閉症は治せないという前提でやってる施設は多いのかもしれませんね。

 

この記事のまとめ

 

・自閉症かどうかの判断(診断)は公的サポートを得るため必要ならば。本質はコミュニケーションの質の違い、症状(行動)は変えられる

・自閉症は脳の障害ではなく、脳の神経の問題だからどんな経験を積むかで変えられる

・自閉症の治療では感覚・身体の問題を解決し、コミュニケーションの発達に取り組もう

 

 

【参考資料】

  • 自閉スペクトラム症と児童精神科医療 篠山大明 信州大学医学部精神医学教室 信州医誌,64(6):329~3392016 Management of Children with Autism Spectrum Disorder : The Role of Child Psychiatry, Daimei SASAYAMA, Department of Psychiatry, Shinshu University School of Medicine
  • Autism Revolution マーサ・ハーバート、カレン・ワイントローブ著 2011, 邦訳「自閉症革命」2019出版
  • Hope for the Autism Spectrum: A Mother and Son Journey of Insight and Biomedical Intervention, Sally Kirk, 2010, Jessica Kingsley Publishers. 邦訳は 発達障害は栄養で良くなる, サリー・カーク, 2019, ヒカルランド