自閉症専門カウンセラーの菅原です。
「3歳の子に音の出るおもちゃを選んであげたいのですが、オススメは?」とご相談をいただくことがあります。
音が出るおもちゃは、確かに面白がってくれそうで、あれこれ買ってみたくなりますね。
しかし、お子さんが3歳になったら、そろそろ音の出るおもちゃは卒業しましょう。
その理由を2つ、これからお話しさせてください。
あわせてオススメのおもちゃも紹介します。
音が出るおもちゃは赤ちゃん向け
音が出るおもちゃは色々売られていますね。
・ギュッとお腹を押すと声がするぬいぐるみ
・ボタンを押すとセリフを話すアンパンマン
・本物そっくりな音が鳴る、おままごと用の電子レンジ
など、少し探しただけでたくさん見つかります。
こうしたおもちゃは、自分で思うように動けない赤ちゃんにぴったりです。
触ると音が出る単純な構造ですから、すぐに遊び方を理解でき、しばらく夢中で遊んでくれます。
その頃に比べて、3歳くらいになると身体の感じはどう変化しているでしょうか。
いかにも柔らかくプニプニしていた赤ちゃん時代と違い、歩いたり走ったりして、自由に動き回れますよね。
こうなると、お子さんの興味はすでに身体を使った「世界の探索」へと向いています。
大きな動きがなく単純なリアクションが返ってくるだけのおもちゃは、この頃になると実は不向きなのです。
赤ちゃん時代の途中からは「変化」に興味が出てくる
音が出るおもちゃは、単純で同じパタンが繰り返されるだけです。
赤ちゃんですら、何回も遊ぶうちに同じことの繰り返しだと分かり、しばらく経つと飽きて遊ばなくなります。
もちろん、同じパタンが繰り返されることも、お子さんの発達過程においては大切です。
おもちゃに限らず、ご両親との間でも、日常生活の中で同じパタンが何度も繰り返されています。
例えば、赤ちゃんが泣いているとすぐにママが来てくれますね。
赤ちゃんは「あ、ママが来た。いつもと同じだ」と安心するでしょう。
それを何度も繰り返すうちに、その安心感が根付く。
少々違ったメカニズムも働いていますが「人見知り」にも共通なところが。
「いつもと同じ、自分のママ」を理解しているからこそ、見知らぬ人がいると「全然違うぞ!」と気づき、不安になる。
そのうち「ママがちゃんと来てくれるはずだ」とわかって、人見知りは収まります。
安心ベースがしっかりできていると、いつもと同じだけだとつまらないから「飽きた」と主張しはじめるのです。勝手なものですね(笑)
・同じパタンの繰り返し「安心感」の変化
①いつもと同じ繰り返しに安心感がある ↓ ②いつもとちょっと違っても平気 ↓ ③いつもと違う刺激が楽しい |
発達に沿って考えると、いつもと同じ安心感に加えて、ちょっと違う「変化」が面白いと感じるようになるのが、遅くても1歳頃です。
これはまるで新しいものを求めていく「好奇心」の原型。
従って、いつもと同じ単純な反応を繰り返すおもちゃに対しては、2、3回反応を確認するともうおしまい。すぐ興味を失う子が多く、代わって「変化」を楽しめるものが好きになっていくのです。
オススメは「ちょっとだけ難しい」おもちゃ
3歳頃のお子さんには、繰り返しと変化を経験できるおもちゃがオススメです。
ちょっと違う・ちょっと難しいことに対して、面白そう・もう少しやってみよう、という興味を持つことは、後々の集中力の原型となります。
また「もう少しだけやってみよう」「少し続けたらできた!」という経験は、粘り強さを育て、かんしゃくを防ぐことにも繋がりますね。
そんな経験にちょうど良さそうなおもちゃを紹介します。
(1)Squigz
「スクイズ」というおもちゃです。このブログ一番上にある写真はセッション中のお子さんが「ミニスクイズ」で作ってくれたものです。
形も触り心地も面白く、それぞれのピースがくっつくだけでなくガラス面にもくっつきます。
くっついている二つを離すとき結構「ぐっ」と力がかかる感覚も経験できます。
触っているだけでも面白く、自由度が高く、幅広い創造性が発揮されるおもちゃです。
なんとなく遊び始めても、ついのめり込んでしまうらしく、ふと気がつくと長い時間遊んでいるお子さんがとても多いです。
(2) Teeter Popper
「ティーターポッパー」は、湾曲した形のボードの下に吸盤がついていて、床に着くと面白い音がします。1)のスクイズと共にアメリカでベスト・トイ賞を受賞しています。
座ったり立ったり、自分の身体の動かし方で自由に遊べますし、バランスボードのような使い方もできます。
実際に使ってみると、動画と同じような楽しい音は出ますが、床にガタンガタン響いたりしません。マンションでも問題ないです。
うちでは9歳女子が通りかかるたびに遊んでます。色々な向きで動いたりバランスを取ったり..「動いてる途中に、プツッという感じが面白い」とのことです。
バランスボールと違うのはそのピタッと感。自分で重心を動かしながら少しずつ段階を追って傾いていく感覚が味わえます。大人=私ももちろんやってみました。大人の体重にも全く不安なく、しっかりした作りです。
(3) Dado Squares
「デイドゥ・スクエア」はカラフルで溝の入った四角いプレートです。
まだ指先がうまく使えないお子さんも大丈夫!一枚が幼稚園のお子さんのてのひらくらいの大きさです。
お皿のように「はいどうぞ」と渡して並べて色で遊んでもいいし、手首の角度を少し内側に変え、そのまま保持する力がつくと、自分の力で2枚がうまく互いの溝部分へカシャ。「あ、ハマった!」と自分で発見していけます。「こうやるんだよ」なんて教えたら、自分で発見する喜びが台無し。もったいないですよ(笑)
その発見の瞬間、平面から立体の二次元へ!お子さんの空間認知が展開するわけです。もちろん創造性、問題解決力、視覚スキルなども培われていくことでしょう。
個人的には手に触れるものは木製のものがいいなと思うのですが、設計からプラスチック製でも仕方がないと感じます。製造元 Fat Brain Toys のおもちゃに使われているプラスチックは中国製などと異なり安全性の高いものなのでご安心ください。
お家やお部屋を作って、そこにお人形を置いたりしてドールハウスのように遊ぶお子さんもいました。
当カウンセリングルームでは、こういったおもちゃをセッションに取り入れています。
単純な音の出るものよりも創造性や身体感覚が刺激されるので、お子さんの眼がキラリと光る瞬間が見つけやすいです。
「あ、これは今うちの子の成長にぴったりなんだな」とご両親にも一目瞭然みたいですね。
海外製で日本ではそれほどメジャーな商品ではありませんが、臨床心理士の目で見てお子さんの発達を促すにはうってつけだと思いますので、音の出るおもちゃの代わりにぜひ検討してみてください。
マイナーだからこそ「プレゼントであげた時に他の人と被らない」という隠れたメリットもありますので、ギフトにもオススメです。
(Amazonサイトにはアフィリエイトコードが含まれています。ちなみに私はアメリカ、Fat Brain Toysに直接オーダーしてまとめて個人輸入しました。3つ目のDado Squares 以外は送料を考えるとAmazon価格はまずまず妥当な線だと思います)